テニスラケットに張っているものは、正確には「ストリング」です。
一般的には「ガット」と呼ぶことが多く、僕たちテニスコーチも「ガット」と呼びます。
しかし正式には、ガットと呼んで良いのは、ナチュラル(天然)製品のみで、メーカーの人たちは一応使い分けているようです。
ナチュラル製品とは、主に動物の腸でできている製品のことです。
昔は羊の腸を使っていたので、ストリングのことを「シープ」などと呼んでいたようです。
現在のナチュラル製品は牛の腸を使っています。
羊は品質が安定しないらしく、牛と比べて高価になってしまうことが理由のようです。
確かに牛よりも羊の方が神経質のような気もしますね。
それに牛の方が腸も長く、1頭あたりの摂れる量にも違いがあるでしょうからね。
ともあれ、テニスというスポーツが世界的に普及されるにつれ、品質の安定供給や価格の観点から羊から牛へと移り変わっていきました。
現代のナチュラルガットはほぼ全て牛の腸でできているということは先ほど書きましたが、それではなぜ同じナチュラルガットの中で価格差が生まれるのか?
メーカーが違えば価格差が生まれることは理解できますが、メーカー内でナチュラルガットにいくつかの価格差をつけたラインナップがあります。
同じ牛の腸からなぜ価格差が生まれるのか?
その理由とは?
世界でも代表的なストリングメーカーのBABORAT(バボラと発音)のナチュラルガットを例に、その秘密を暴露していきます!
それではBABORATのナチュラルガットのラインナップをご覧下さい。
VSタッチ
ボールのホールド性能を重視し、爽快な打球感が特徴です。
VSタッチ✕ルキシロンのアルパワーの組み合わせは最強。(※業界では有名)
VSチーム
セレクトされた高品質な牛の腸の中でも、弾力性に優れる部分だけを抜き出して作られた製品です。
反発力が抜群に良いのが特徴。
トニックプラス
VSタッチ、VSチームのような高品質なガットを作る過程で弾かれたモノを集めて作った製品。ナチュラルガットの中での入門用的な位置づけとなっていて、実際に安い。
その製造の過程の性質上一つひとつの製品に当たり外れが生まれやすいというのはココだけの話。
<結論>
牛の腸にも部位によって、また品質によって結構バラつきがあるということがお分かり頂けたでしょうか?
考えてみたら、そもそも生き物の内臓を使う訳ですから、品質にバラつきが出るのは当たり前なのかも知れません。
むしろ、そのような性質を持った原材料の中からいくつかのラインナップを作り出したメーカーの技術力と発想力に拍手を送りたいと思います。
僕は長くテニスをしていて、職業にまでしている立場なので、ナチュラルガットを自分で使ってみたこともあります。
やはりシンセティック製品にはない打球感の柔らかさと、ボールの重さを感じない反発力があります。
おいおい、こんなに飛んで行くの?
と思うくらい、軽くボールが飛んで行きます。
ポリガットの弾き出すような飛びとは違い、ひたすら軽くて心地よい感触が手に残ります。
そして高価なナチュラルガットは、糸の色が透明というか、薄い飴色をしています。
すごくキレイですよ。
難点を挙げるとするなら、シンセティック製品に比べ、高価なところと、耐久性が弱いところ。
しかし、価格差以上に性能は格段に良いです。
耐久性は確かにポリガットとは比べようもないくらい弱いです。
スピンぐりぐりのプレ―ヤーには向いていません。
女性プレーヤー、ベテランプレーヤー、フラット、スライス系のプレーヤーのあなたには、新しい扉を開いてくれるガットになるかもしれません。
あなたが、「趣味はテニスです!」と誰かに言うくらいなら、
一度はナチュラルガットを使ってみて下さい。